2022
07.08
INTERVIEW
私が選んだポスター/並木浩 (TIMBER YARD)
私が選んだポスター/並木浩 (TIMBER YARD)
「POSTERS」でポスターを購入されたことをきっかけに、購入者の仕事や生活についてお話を伺いました。
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並木 浩/ 1961年生まれ。大学卒業後、輸入木材の専門商社勤務を経て、家業の木材卸売を行う並木木材に入社。1992年より代表を務める。材木業と並行し、1995年に運営会社となるコージーライフを設立。同年、インテリアショップ・TIMBER YARDをオープン。その後、注文住宅の設計・施工を行う住宅部門を起ち上げる。趣味は、国内外の建築やインテリアを巡る旅。
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Q. KIGIの渡邉良重さんの作品を選んだ理由を教えてください。
A. 私が日頃手がけるインテリアショップや住宅事業では、北欧のデザインを中心に扱っています。そういった空間にぴったり合うものを選ぶか、少し異なるニュアンスの作品にするか、スタッフと喧々諤々話しながら選ばせていただきました。渡邉さんの作品はもしかしたら我々の空間には少し強いかなとも思いましたが、飾るとその空間を引き立たせてくれるようなパワーを感じて、思いきって冒険してみました。結果は大当たりで、北欧系の柔らかなデザインは時にぼやけてしまうところがあるのを、見事にアクセントとなって空間を演出してくださっています。
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Q. TIMBER YARDのロゴはKIGIの植原亮輔さんのデザインですね。
A. KIGIさんとの出会いは2017年に遡ります。実家の材木業を継ぎながら、インテリアショップ「TIMBER YARD」と住宅事業を立ち上げました。TIMBER YARD 21周年のアニバーサリーを記念してロゴを新しくしたいと思い、バイヤーの山田遊さんにKIGIさんをご紹介いただいたのがきっかけです。KIGIという名前の由来や、お二人の作品の背景にある自然への関心や思いをお聞きして、この方たちなら我々の考えの本質をわかっていただけそうだとデザインをご依頼しました。できあがったデザインを見て、最初は自分たちには少し先に行きすぎていないかという思いも過ぎりましたが、今振り返るとあの時思いきったデザインをしていただけたことで、それに追いつこうとさまざまなチャレンジができたと思っています。今回ポスターを選ぶときも、ふと当時のことを思い出して、あの時みたいに冒険してみようという気持ちになりました。
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キッチンスタジオ、住宅モデルハウスを併設し、家具・雑貨から住宅まで手がけており、敷地内のカフェは地元の人たちの憩いの場として賑わいを見せる。
「TIMBER YARD(材木置き場)」の名は、大正13年に材木屋としてはじまった原点に由来。ショップのロゴやデザインはKIGIによるもの。
Q. TIMBER YARDをオープンしたきっかけを教えてください。
A. 家業を継ぐ前は、木材の商社で修行していました。海外の暮らしを見る中で、日本の住環境は遅れていると感じ、流通業だけでなく家づくりを自分でやってみたいと思うようになりました。例えば、今でこそ木材の乾燥材も当たり前になっていますが、30年前の日本にはなかったので、木を乾かしてから家を建てていました。ただ高度成長期には、切った木をすぐ使った住宅も多く、建てたあとで乾いてくるんですね。木材は含水率30%以下になると収縮し始めるので、寿命30年にも満たない粗悪な住宅も多かった。そんな業界の様子も見てきたので、本質的にいいものをつくりたいという気持ちが強くなりました。あと、実はあまり知られていないのが木材の値段です。だいたい家を建てるのにかかる費用の1割ぐらいが相場です。今は少し上がっているので、2000万円の住宅なら 250~300 万円ぐらい。質の良い木材は高いという漠然としたイメージがあるかもしれませんが、全体の費用から考えれば割合は多くない。だからこそ良い木を使ってほしい。こういった情報もきちんとお伝えしたいと思ったんです。
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Q. 住宅事業よりも前にインテリアショップをオープンしたのはなぜですか。
A. もし自分が家を建てるとしたら、自分と感性が合う人につくってほしいと思ったからです。インテリアショップを通じて我々の考え方も発信できるし、まずはインテリアをご相談いただくことで、お客様の感覚も知ることができる。インテリアショップで出会ったお客様から、家づくりにつながっていくような流れをつくりたかったんです。オープンから27年が経ち、地域のお客様にたくさんお越しいただいているのも嬉しいことです。コロナ禍を経て、家で生活することの価値にこだわる方が増えていますよね。我々が扱う北欧の家具は決して安いものではありません。ただし、近隣に家具量販店もありますが、同じようなデザインの照明でも光り方が全然違います。そういったことに興味を持ってくださる方が増えている、ということは年々実感しています。
Q. 日頃インテリアの提案をされている中で、ポスターを飾る魅力はどう感じていますか。
A. 以前、フリッツ・ハンセンの元社長の自宅にお邪魔した際に、玄関にポスターを上手に飾っていたのが印象的でした。ヨーロッパの家は壁の使い方が上手なんですよね。特に北欧は冬が長いので、家の中で楽しむことへの欲求が強い。だからみんな気軽に好きなものを壁に飾ります。日本で壁に飾るというと、高価な絵画になってしまって、普通はなかなか手が出ない。もっとラフな感覚で、好きなポスターや写真を飾ることが一般的になっていってほしいと思います。
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