2022
09.06
INTERVIEW
私が選んだポスター/Parityclub
「POSTERS」でポスターを購入されたことをきっかけに、購入者の仕事や生活についてお話を伺いました。
Parityclub(パリティクラブ)/島根県松江市のデザイン会社。CI / VI、チラシ・ポスター、WEBサイト制作、イベント企画・運営、3Dなど総合的にクリエイティブを提案する企業として、県内・県外の仕事を幅広く手がける。「全日本広告連盟山陰大会(2021年5月)」に合わせてつくられた山陰中央新報の特集紙面ではクリエイティブディレクションを担当。島根を代表するデザイン会社として注目されている。 今回は、社長の瀧尻雄也さん、ディレクターの澤野大地さん、デザイナーの瀧尻悟史さんにお話を伺いました。
Q. 社長の個人用と会社用として2枚のポスターをご購入いただきました。個人用として大原大次郎さんの作品を選んだ理由を教えてください。
瀧尻雄也:大原さんのDaily Mobileのシリーズにすることはすぐに決めました。元々写真を使ったポスターが好 きなのが理由ですが、下半分がほぼ真っ白であるインパクトにも惹かれました。私の部屋はモノが少なく、家具も黒系が多いモノトーンの色合いなので、白い部分が活きるだろうと思ったんです。ただ、シリーズ3作品のどれにするかは随分と悩みました。同じ場所を定点観測した作品で、時間帯によって建物や芝生に映る影の表現が違います。最終的には影の面積が広い作品を選びましたが、緑色の芝生と黒い影、白い余白のバランスを見比べながら、自分の好みを選んでいく時間がとても楽しかったです。
Q. 部屋にどのように飾られていますか?
瀧尻雄也:ポスターは部屋に一つしか飾らないと決めています。なので、部屋の中で主役になるようにイメージ しました。サイズも大きめのA1サイズを選び、せっかくなので自分の目にたくさん入る場所に飾りました。
Q. 会社用には葛西薫さんの作品を選ばれました。こちらの理由も教えてください。
瀧尻悟史:会社に飾る作品は僕が選ばせてもらいました。実は葛西さんは自分がデザイナーになるきっかけになった方です。デザインの専門学校時代、広告といえばスーパーのチラシのようなイメージが強かったのですが、葛西さんの作品と出会い、こういうグラフィックデザインがあるんだと気づくことができました。特にユナイテッドアローズの広告が好きでした。身近な服のブランドがあんな風にかっこいい表現になるんだ、と憧れました。広告のデザインを頑張りたいと思わせてくださった方です。
Q. オフィスで床置きにされているんですね。
瀧尻悟史:zoom会議の時に映り込むようにしています(笑)。壁にシンプルに飾るのもかっこいいですが、僕は雑多な中にさりげなくポスターがある風景も好きです。色々なものが置いてある中でも存在感を出したくて、サイズはA0にしました。作品のブルーと、オフィスの壁の淡いブルーとの相性も良いなと感じています。
Q. 会社のお仕事についてもお聞かせください。イベント会社からスタートされて、瀧尻さんが社長になられてからデザインに軸足を置かれるようになったとお聞きしました。
瀧尻雄也:パリティクラブは約30年前に私の父親が始めた会社で、行政やメディアなど地域の活性化につながるようなイベントを手がけてきました。2017年に父親が亡くなり、急遽県外にいた私が社長を担うことになりました。どうしてもイベントがメインだと外部環境の影響を受けやすく、もっと総合的にクリエイティブを提案していける会社に成長させたいと思ったんです。デザイナーとしてすでに入社していた弟ともう一人のデザイナーの3名で再出発し、おかげさまで今では12名の社員を抱えています。
Q. 近年で印象に残るプロジェクトはありますか?
澤野:昨年、全日本広告連盟の山陰大会が島根で開催されましたが、地元の新聞社が地域の魅力を伝える特集紙面をつくることが通例になっています。その紙面のクリエイティブディレクションを担当しました。どんなコンテンツがふさわしいかを考えていたときに、ちょうど島根出身の写真家の藤井保さんがUターンされたと耳にしました。県としてUIターンを促進していますし、ぜひ藤井さんに島根の魅力を伝える写真を撮っていただきたいと思い、恐れ多くもご相談したところ快諾いただきました。藤井さんの素晴らしい写真と共に、我々にとっても名刺代わりになる代表的な仕事になりました。
Q. 地域に根ざしながらも、県外の仕事も手がけられているそうですね。
澤野:色々なご縁がつながり、そういったお仕事も少しずつ増えてきています。それこそ藤井さんのご紹介もあり、 グラフィック社から出版された『藤井保 瀧本幹也 往復書簡 その先へ』の制作にも関わらせていただきました。アートディレクションはなんと葛西薫さん!瀧尻悟史が震えながら組版を担当させていただきました。
瀧尻悟史:まさかお仕事で関われる日がくるとは夢にも思っていませんでした。いただく指示書が展示会などで見てきた作品のようで、そういったものにいちいち興奮しながら、文字組や配置の考え方などとても勉強になりました。
Q. この先どんな仕事を手がけていきたいですか?
瀧尻雄也:父親の代から根底にある、地域を活性化させたいという思いは引き継いでいきます。そのために若者の未来をつくっていくことこそが使命だと思っていて、デザインはその手段です。まずは島根でナンバーワンの規模のデザイン会社になりたいですし、コロナ禍をポジティブに捉えれば地域間の壁が低くなったので、県外とつながれることも強みにしていきたいと思います。今回ポスターを購入させていただいたのには、二つの側面があります。一つは生活において自分の好きなものに囲まれる喜び、もう一つはデザイン会社として自分たちもこういった素晴らしいデザインを提案していきたいというモチベーションを提供してくれると考えたからです。プライベートと仕事の両面において活力を与えてくれる 存在だと実感しています。